ディベートで論題を分析するための3つの思考法【準備時間ではこれをやる】

ディベート ディベート知識

「ディベートをするときに、どうやって論題を分析していけばいいのだろう? いつも思いついたことだけ話しているけど、これでいいんだろうか。」

このような悩みを持つ方に、この記事ではディベートをする際の3つの思考法を解説していきます。

 この記事で書いていること

  1. トップダウン思考法
  2. ボトムアップ思考法
  3. ホリゾンタル思考法

この記事を書いている私は、即興型英語ディベート歴2年です。

ディベートの3つの思考法とは

ディベートで論題を分析するときの代表的な思考法は、主に以下の3つがあります。

ディベートの3つの思考法とは
トップダウン思考法 大きいところから因数分解しながら考える。
ボトムアップ思考法 具体的に関わる人や事象から考える。
ホリゾンタル思考法 相手の議論を予想し、並行して考える。

名前に方向を表す言葉が使われている通り、これらは思考の流れる方向を示すガイドラインの役目を果たしてくれます。

これらを組み合わせて、複数の方向から思考することで、強い立論や反論をつくることができます。

思考法が役に立つ理由

 これらの思考法を意識することで、ディベーターとしてステップアップすることができます。その理由は、以下の2つです。

理由① 時間を効率的に使うことができる

思考法を意識することで、効率的にプレパを行うことができます。
なぜなら、思考法を意識せずに「思いついたアイデアから使う」というやり方をすると、同じ道を行ったり来たりしてしまうからです。これは非効率です。

一方で、思考法で流れる方向を意識することで、「自分が何を考えているのか」を考えるというメタ視点が身につきます。それにより、道に迷うことなくアイデアを拾うことができます。
 特に、準備時間が限られている即興型ディベートでは、時間の効率性はすごく重要です。

ディベート- 時間を効率的に使うことができる

理由② 安定して勝つことができる

複数の思考法を意識することで、どんな論題でも、安定して議論を組み立てることができます。

 なぜなら、複数の切り口からアイデアを出し、組み合わせることで、必要なアーギュメントを漏れなく作ることができるからです。
 「何もアイデアが浮かばない..」という状態を防ぐことができます。

ディベート- 安定して勝つことができる

それぞれの思考法を解説する

それでは、ここからそれぞれの思考法を詳しく解説していきます。

トップダウン思考とは

 トップダウン思考法とは、大きなかたまりから因数分解しながら考える方法です。
大筋 → 細部と言う流れで、考えていきます。

ディベート-トップダウン思考法とは
 
具体的には、以下の手順で思考し、スピーチにしていきます。

  1. 論題に出てくる言葉、関わる人々を因数分解していく。
  2. 分解したワードごとに、その論題を肯定 / 否定するために証明するべきことを考える。
  3. その証明をスピーチの中に組み込んでいく。

とりあえずトップダウン

トップダウン思考法は、3つの思考法の中でも、とりあえず最初にやる思考法です。
なぜなら、ディベートの論題自体が、基本的に「大きなもの」であることが多いからです。

・政府はタバコを禁止するべきである!
・義務教育に留年制度を設けるべきである!

 ディベートの論題は(インフォメーション付きで細かく状況が描かれていない限り)、このように大きなかたまりになっています。
 最初にトップダウン思考で因数分解していくことで、登場人物や議論を俯瞰することから始めましょう。

ボトムアップ思考とは

ボトムアップ思考とは、論題によって影響を受ける具体的な人・事象から考える方法です。トップダウン思考とは反対に、細部→大筋へと思考を広げていきます。

ディベート-ボトムアップ思考法とは

具体的には、以下の手順で思考し、スピーチにしていきます。

  1. その論題により影響を受けるアクターをリストアップする。
  2. アクターをさらに細分化して、最も影響を受ける人を特定する。
  3. どんな影響を受けて、どう変化するのかを考える。
  4. その変化を論題の肯定 / 否定につなげる。

狭く深い議論で有効

 ボトムアップ思考が活躍するのは、数は少ないけれど、特定の人物が大きな影響を受けるというような場面が多いです。
 なぜなら、影響を受ける人の数が少ない場合、その人たちがどんな問題に直面するのかを具体的に分析することで、議論のインパクトを出さないといけないからです。

 例えば、「政府は全ての暴力的なゲームを禁止にするべきだ」という論題の賛成側の場合。 

肯定側のメインケース「ゲームの暴力的で過激な表現が、プレイした人にいじめや犯罪を誘発するから、禁止にするべきだ!」

と話すとします。
しかし、実際にはほとんどの人は理性的で、ゲームと現実を区別できることは自明ですね。これだけだと、相手から簡単に反論されてしまいます。

 そこで、ボトムアップ思考により「本当にその悪影響を受けるのは誰か?」を具体化するところから考えます。

本当にいじめや犯罪を誘発されそうなのはどんな人?
・小学生〜中学生くらいの年齢
・ゲーム中毒で毎日10時間以上プレイしている
・年齢制限のあるゲームも、こっそり入手してやっている
・ゲームチャットを通して、暴言を含む会話にも慣れている

このように、「最も影響を受ける特定の人」から具体的に考えることで、論題の肯定・否定につなげていきます。
そのためには、思考が具体性→大筋へ流れるボトムアップ思考が適しています。

ホリゾンタル思考とは

ホリゾンタル思考とは、「相手がどんな議論をするか」を起点にして考える方法です。とはいえ、ディベートでの基本的な考え方で、どのディベーターもすでにやっていると思います。

ディベート-ホリゾンタル思考法とは

相手のどこを予想し、何を考えるのかは、主に以下の3つが挙げられます。

  1. 相手のアーギュメントを予想し、自分たちのモデルや反論で削れないか考える。
  2. 相手からの反論を予想し、自分たちのアーギュメントの完成度を上げる。
  3. 争点がどこになるかを見極め、自分たちがどこで勝つのか(勝ち筋)を考える。

ホリゾンタル思考で先手を打つ【中級者】

相手のアーギュメントを削る方法は、反論だけではありません。モデルを細かくセットして先手を打つという方法をとってみましょう。そうすることで、ディベートの最初から最後までを通して、相手の話を削ることができます。

簡単な例だと、「政府はタバコを禁止するべきだ」の否定側が、

受動喫煙を防ぐため、分煙を徹底します。
もちろん路上喫煙は禁止です。違反した場合は罰します。

というモデルを立てるようなものです。

 先手を打つことで、ディベートを有利に進められます。特に、相手への反論の機会が限られるBPのオープニングなどでは、この思考が重要です。
 ホリゾンタル思考で考えることで、相手のアーギュメントを予想しましょう。

思考法を組み合わせる

 今回、思考法を始めて知った方は、自分の思考のクセはどのタイプに近いか?を考えてみることがおすすめです。

 なぜなら、最初にも書いた通り、思考法を組み合わせて満遍なく使用することで、安定して議論を組み立てることができるからです。
 もし、「今までは大体トップダウン的に考えていた」と言う人は、ボトムアップ思考やホリゾンタル思考も意識して使ってみるといいと思います。

 この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。