英語ディベートのBPのルールを解説する【ポジションごとの役割も】

ディベート ルール

「これからBPスタイルのディベートに挑戦する。」
「BPについて知りたい。」

このような疑問を持つ方に、BPスタイルのルールや特徴をわかりやすく解説します。

 この記事で書いていること

  1. BPディベートの基本的なルール
  2. BPディベートの特徴
  3. BPディベートののrole fulfillment
  4. BPディベートのポジションごとの役割

冬はBPの季節です。

BPディベートの基本的なルール

BPは“British Parliament”の略です。イギリスの議会を模しています。

他のディベートのスタイルと比べた大きな特徴は、4チームで議論を行う点にあります。各チームは以下の名前で呼ばれます。

  • Opening Government (OG)
  • Opening Opposition (OO)
  • Closing Government (CG)
  • Closing Opposition (CO)

基本的なルールと、ディベートの流れは以下のような感じです。

BPディベートの基本的な流れ
チーム数 4チーム
1チームの人数 2人
プレパ時間 15分
1人のスピーチ時間 7分

BPでは、同じサイドのチーム(OGとCG、OOとCO)は味方という体で議論をします。しかし、チームとしては別々です。4チームそれぞれが勝利を競います。

各スピーカーの呼び名はこんな感じです。

■ OG
・PM(Prime Minister)
・DPM(Deputy Prime Minister)

■ OO
・LO(Leader of Opposition)
・DLO(Deputy Leader of Opposition)

■ CG
・MG(Member of Government)
・GW(Government Whip)

■ CO
・MO(Member of Opposition)
・OW(Opposition Whip)

勝敗のつき方

BPの勝敗は、4チームそれぞれに1位〜 4位までのランキングがつきます。

BP大会の予選ラウンドでは、順位に応じて以下のようなポイントがつきます。合計ポイントが多いチームからブレイクできます。
1位 → 3pt
2位 → 2pt
3位 → 1pt
4位 → 0pt

BPでの勝敗の基準は貢献度です。論題の肯定 or 否定にどれだけ貢献できたのかでランキングがつきます。必ずしも同じサイドのチームが1・2位を取るわけではなく、「CGが1位だけどOGは4位」ということも起こり得ます。

BPの勝敗のつき方の例

勝敗を決める他の要素

また、貢献度がほぼ同じだった場合は、次のような要素もランキングを決める基準になることもあります。(これらは後述します。)

・そのポジションの役割(role fulfillment)を果たしているかどうか
・POIに答えたかどうか

BPをするときの制約

BPではルール上の制約がいくつかあります。基本的には、この3つを覚えていればOKです。これを破ると、アーギュメントが取られなかったり、ジャッジからの評価が下がったりするので注意です。

BPスタイルの3つの制約
  1. モデル・定義を決められるのは、PMのみ
  2. Whipは新しいアーギュメントを出せない
  3. 同じサイドの別のチームと矛盾したらダメ

制約① モデルはPMが決める

モデル・定義を立てられるのは8人の中でPM(OGの1人目)のみです。他のチームはPMの決めたモデルや定義にしたがってディベートを行います。(もしPMの決めたものが適切でないときは、①PMへのPOIか、②LOのDefinition Challengeでのみ、再設定できます。)

ちなみにモデル・定義というのは「どのように政策を行うのか」「このディベートが何を対象として行われているか」ということです。

例えば、”THW set female quota on the board of executives in corporation.(企業の取締役に女性枠を設けるべきだ)“というモーションの場合
→ モデル:取締役の何パーセントを女性にするか?
→ 定義:corporationはどこまでを含むのか?

制約② Whipは新しいアーギュメントを出せない

Whipというのは、Closingチームの2人目のスピーカーです。そして、Whipは新しいアーギュメントを話すことができません。なぜなら、各サイドの最後に話す彼らには反論する人がいないからです。

ですが、すでに出た話の補足の分析・新しいexampleなどは出すことは可能です。どこまでが新しいアーギュメントになるかのは、フレーミングやジャッジの受け取り方などにも左右されます。

制約③ 同じサイドで矛盾することはダメ

議論においては、同じサイドのチームは味方の体でディベートをします。そのため、同じサイドのチームと矛盾することを話すと、そのアーギュメントは無効になります。これをナイフィング(Knifing)と言います。

基本的に後から話したチーム(CGやCO)の話が無効になるため、Closingのチームは注意が必要です。とはいえ、言い方に気をつければ回避できることも多いです。味方と矛盾した話をするときは、”even if~“ などのワードで始めるのがオススメです。

BPディベートの特徴

続いて、BPの特徴です。おもな特徴はこの3つだと思います。順番に解説します。

  1. 持ち時間の短さ
  2. エクステンションの概念
  3. 役割の違い

① 持ち時間の短さ

 BPではラウンド前の準備時間が15分です。これは、ほかのNA・Asianスタイルと比べて最も短いです。さらに、1チームあたりのスピーチ時間も同じく短いです(1チーム14分)。
そのため、BPではより速くスピーチを組み立て、より密度の高い説明をすることが求められます。

ディベート時間は長い

 一方で、スピーカーの人数が多いため、ディベート全体にかかる時間は最も長いスタイルです。すなわち、ディベーター自身の集中力はもちろん、ジャッジの集中力も気にかける必要があります。

 これにより、BPでは話し方・見せ方がより大事になることも特徴だと思います。より明確にシンプルに説明することや、自分たちを有利に見せるフレーミングが、勝敗に関わることも多いです。

時間でみるDebateのスタイル

② エクステンションの概念

Closingチームは、Openingチームが出していない新しいことを話す必要があります。これをエクステンションと呼びます。最初はエクステンションを考えるのに苦労します..

エクステンションの出し方の例

エクステンションは、アーギュメント全体が新しい必要はなく、新しいメカニズム・新しい具体例などの部分的な分析を出すことも含まれます。そして、ジャッジに評価されるエクステンションは以下のような性質を満たしていることが多いです。

  • Openingの話より重要であること。
  • Openingの話が成り立つために不可欠であること。

エクステンションでディベートが広がることが、BPスタイルの特徴です。

③ 役割の違い

すべてのチームは「論題を肯定 or 否定すること」が求められています。これは、NAやAsianスタイルと同じです。
しかし、BPの場合はそれに加えてチームごとに期待される役割があります。これをrole fulfillmentと呼びます。これを満たしているかどうかも、勝敗に大きく関わってきます。各チームのrole filfillmentは、次でくわしく説明します。

BPではPOIも大事

また、BPではPOIの持つ重要性が大きいです。なぜなら、POIが唯一の反論の機会になる場合があるからです。具体的には、OpeningチームがClosingチームに直接反論したければ、POIを使うしかありません。

そのため、POIの内容がジャッジに重視されやすく、また、POIを取らないことが減点要素になることもあります。POIは積極的にして、されたら答えましょう。

BPディベートののrole fulfillment

BPのディベートで各チームが「期待されていること」をrole filfillmentと呼びます。これを満たしていると、ジャッジからの評価も上がります。OpeningとClosingでそれぞれの期待されていることを解説します。

Openingチームが期待されていること

Openingチームの特徴は、各サイドで最初に話すことができることです。また、スピーカーが2人とも立論できることも挙げられます。

このような特徴から、Openingチームが求められるのは主に以下の2つです。

  1. 明確なセットアップでディベートの土台を作ること
  2. 当たりまえで、重要なアーギュメントを立てること

明確なセットアップが必要な理由は、みんなが同じ文脈でディベートできるようにするためです。チームによって別々の状況を想定したままディベートが進むと、有意義な議論になりません。

そのため、「論題のワードがどんなことを意味するのか?」「ディベートをしているのはどんなコンテキストか?」を説明するだけでも、ディベートへの貢献として評価されます。

また、とにかく当たり前のアーギュメントをしっかり説明することも大事です。議論が白紙の状態からスタートできるため、最重要なアーギュメントを確実に立てましょう。

Closingチームが期待されていること

一方でClosingチームの特徴は、Openingチームよりも準備できる時間が多く、彼らの話を聞いた上でスピーチができることです。また、対面のClosingチームに唯一反論できるチームでもあります。

このような特徴から、Closingチームが求められるのは主に以下の2つです。

  1. エクステンションでディベートを発展すること
  2. 議論の全体を見渡して、反論や比較を行うこと

Openingのチームと話が被ってしまったり、新しい話をしてもディベートをどう発展させたかわからない場合、Closingは評価されません。準備時間が長い分、より有効な話を用意しましょう。

また、反論や比較はClosingチームの大きな貢献ポイントです。特にBPでは、ジャッジも4チームを比べて順位をつけるのは大変です。そのため、いい比較軸があるとありがたいのです。

BPディベートのポジションごとの役割

最後に、各ポジションの役割の一例をご紹介します。何を話すべきかはディベートやスピーカーにも依るので、あくまで参考程度にお読みください。

Opening Government (OG)

Opening Government (OG)
論題が発表されて、15分で話し始めなければいけないチームです。スピードと堅実さが試されます。

■ PMの役割
┗ motionのセットアップ
┗ スタンスの明示
┗ アーギュメントの説明

■ DPMの役割
┗ LOへの反論
┗ アーギュメントの説明
┗ サイドの比較

Opening Opposition (OO)

Opening Opposition (OO)
当たり前のアーギュメントを詰めつつ、OGの2人のスピーカーにも対応するので、実は結構忙しいです。反論と立論のバランス感覚が大事です。

■ LOの役割
┗ 必要であればカウンターモデルやDefinition Challenge
┗ スタンスの明示
┗ PMへの反論
┗ アーギュメントの説明

■ DLOの役割
┗ OGへの反論
┗ アーギュメントの説明
┗ サイドの比較

Closing Government (CG)

Closing Government (CG)
Closingチームがどうディベートに加わるのか、方向性を決めます。自由度が高い分、ディベーターの技量が順位に反映されやすいイメージがあります。

■ MGの役割
┗ Openingの要約
┗ OOへの反論
┗ エクステンション
┗ そのエクステンション大事な理由

■ GWの役割
┗ Oppositionへの反論
┗ 自分たちのエクステンションのハイライト
┗ サイドの比較
┗ サイド内の比較 (OGに比べどこが勝っているか)

Closing Opposition (CO)

Closing Opposition (CO)
「最も1位をとるのが難しいけれど、最も4位を取りにくいのがCO」と聞いたことがあります。3チームの立論が出揃っているので突き抜けにくいですが、どう立ち回るかという戦略を練りやすいチームです。

■ MOの役割
┗ Openingの要約
┗ Governmentへの反論
┗ エクステンション
┗ そのエクステンション大事な理由

■ OWの役割
┗ Governmentへの反論
┗ 自分たちのエクステンションのハイライト
┗ サイドの比較
┗ サイド内の比較 (OOに比べどこが勝っているか)

まとめ

この記事では、これからBPに取り組む方に向けて、BPスタイルのルールや特徴を解説しました。

BPではポジションによって求められることが違います。自分のポジションの役目を把握し、それを果たすことを意識すると、勝ちにもつながりやすいです。

この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。

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