【図解】アナロジーの意味をわかりやすく図解する【ディベーターが使う】

ディベート ディベート知識

「アナロジーという言葉を聞くけれど、具体的にはどういう意味なんだろう。」
「自分もアナロジーをディベートの中で実践したい..」

このような悩みを持つ方に、前半ではアナロジーの意味について、後半ではアナロジーをディベートの中で活用する方法について解説します。

 この記事で書いていること

  1. アナロジーの意味とは?
  2. アナロジーがディベートにどう役に立つか?
  3. アナロジーを使いこなせるようになるために

細谷功著の、『アナロジー思考』を参考に、この記事を書いています。ちなみに英語ディベート歴2年です。

アナロジーの意味とは?

まず、アナロジーの意味から解説していきます。

アナロジーは、日本語で類推です。言葉の通り「類似のものから推し量る」ことを、意味します。

具体的には、自分がよく知らない領域に出会ったときに、自分が知っていて、かつ似ている領域の知識を借りてくる。別の分野に応用する。といったことです。下の図のようなイメージです。

アナロジーの意味とは?

自分の知っている領域の知識を応用することで、欠けている部分を推測することが可能です。

アナロジーでいう類似とは?

アナロジーを考える時に、意識するべき点があります。表面的な類似ではなく、構造的な類似を見抜くことです。

実はモノゴトの類似には、表面的類似と構造的類似の2種類があります。下の図をみると違いがわかりやすいです。

アナロジーでいう類似とは?

右の図も左の図も、もとの図と「似ている」ことに変わりはありません。しかし、似方が違います。

右の図は、1つ1つの図形の形や色が同じという点で、似ています。これが、表面的な類似です。一方で左の図は、直線状に大きさ順で並んでいるという点で似ています。これが、構造的な類似です。それぞれ、以下のような特徴があります。

表面的な類似 構造的な類似
比較するモノの数 1つ 2つ以上
共通点 1つ1つの性質 2つのモノの関係性、3つ以上のモノの構造
難易度 発見しやすい 発見しにくい
図形にたとえると 「点」としての類似 「線」や「面」としての類似
アナロジーに役立つか? No Yes

大事なのは構造的類似

そして、アナロジーに役に立つのは、後者の構造的な類似です。なぜなら、他のあらゆる領域に応用して気づきが得られるのは、構造的な類似だからです。

表面的な類似は、同じ領域や、隣り合う領域でしか見つけることができません。それは簡単に見抜くことができますが、その後に特に新しい発見もありません。

一方で構造的な類似は、ずっと離れた遠い領域にも、類似性を見つけることができます。そして、その領域の空白を推測することで大きな発見があります。

アナロジー思考を実践するときは、構造的な類似に目を向けましょう。

抽象化して具体化する

この構造的類似を見つけるためにすることが、モノゴトを抽象化することです。具体的には、以下のようなことをします。

  • 広い範囲に適用できるように一般化する
  • 枝葉を切り捨てて単純化する
  • 関係性がわかるように構造化する

そして、それを応用する別の分野で、再び具体化します。

どのレベルで抽象化する?

アナロジーのための抽象化のレベル

抽象化には、様々なレイヤーがあります。抽象化のレベルが高いほど、より広く遠い領域で、応用することが可能です。しかしその分、適切に他の分野で具体化するための難易度が上がります。

自分が使いこなせる範囲で、抽象化のレベルを高めていくと、様々な気づきがあると思います。

アナロジーがディベートにどう役に立つか?

ここからは、ディベーター向けの内容です。アナロジー✖️ディベートの関係について解説していきます。

ディベートの中でアナロジーが役立つのは、具体的に以下の3つの場面です。順番に解説していきます。

  1. 自分の理解
  2. 相手への説明
  3. アイデアの創造

①自分が理解するため

アナロジーを使うことのできるディベーターは、ディベートの試合の全体像を簡単に把握し、理解することができます。それが、自分が初めて経験する論題であってもです。

なぜなら、自分が知っている論題から、類推しているからです。

・そのディベートの対立はどこで起こるのか?
・お互いのチームの勝ち筋は何か?

表面的な部分は違っても、このような構造的な部分が似ていることは多いです。それらを過去のラウンドと比較して予想することで、試合を有利に進めることができます。

アナロジーで自分が理解する

②相手への説明のため

アナロジーは、他人への説明をわかりやすくすることにも使えます。相手にとって未知の領域を、相手にとってなじみのある領域で、説明することができるからです。

アナロジーで相手に説明する

そして、これはディベートにおいて重要です。なぜなら、ディベートはジャッジを説得することが目的の競技だからです。

ジャッジにとって理解しやすい「たとえ話」を出す方が、よく知らない話をするよりも説得力があります。アナロジーを使えるディベーターは、わかりやすく話すことができます。

③新しいアイデアを出すため

アナロジー思考のあるディベーターは、アーギュメントやexampleとして、幅広いアイデアを出すことができます。

なぜなら、自分が持っている一見関係なさそうな知識を結びつけられるからです。

最も簡単にアイデアを出す方法として、「自分が以前にその論題のディベートをやったときに出たアイデアを使う」という方法があります。しかし、過去にやったことのある論題は、もちろん有限です。そして新しい論題には対応できません。

一方でアナロジーを活用できるディベーターは、

・自分が経験した、別の論題のディベート
・ディベートとは関係なく、日常で得た知識(ニュース、本、映画など)

このような知識から、今必要なアーギュメントとの類似点を見つけて借りてきたり、推測したりすることができます。そのため、持っている知識の量が同じだったとしても、ディベート内で使えるアイデアの量を爆発的に増やすことができます。

アナロジーでアイデアを出す

アナロジーを使いこなせるようになるために

それでは最後に、ディベートの中でアナロジーを使えるようになる方法を解説します。主に、以下の2つです。

  1. 抽象化して引き出しにしまう
  2. 常にアンテナを張る

抽象化して引き出しにしまう

これは、ラウンド練習を行った後に、そのラウンドの対立を抽象化して記録しておく方法です。抽象化した状態でストックすることで、後から共通点を見つけて借りることが簡単になります。

また、それとセットで、以下のことを記録しておくのがおすすめです。

  • それぞれのサイドの勝ち筋はなんだったのか?
  • 勝敗に影響した1番の要因はなんだったか?

そうすることで、次に類似した論題が出た時に、穴埋め問題のように勝ち方のイメージを推測することができます。

常にアンテナを張る

これは、日常生活において、すべてディベートにつなげて考えてやろうと思って生きることです。少し変な人ですね。

しかし、普段から問いを持って生活していると、多くのヒントがディベートと結びつきます。

例えば小説とか..

私は時代小説が好きでたまに読むのですが、あれはアイデアの宝庫です。

例えば、「紛争後の社会では、政治犯に制裁を下すよりも、恩赦を与えるべきである」という論題があります。これについては、江戸幕府倒幕後の明治新政府の話が、exampleとしてぴったりです。他にも、武士や百姓の格差や差別文化なども、ディベートで扱われる論題に多く活用できます。

このように、アナロジー思考が使えると、すべてのモノゴトを学びの対象にすることができます。

まとめ

知の競技であるディベートにおいて、アナロジー思考は強力な武器です。

もっと体系的にアナロジー思考を学びたい場合は、この本を手に取ってみるのがおすすめです。(今回この記事に書いたことは、ほんの一部です。)


この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。