【自由からの逃走】自由な世界を強く生きていくための名著【古典を読む】
「フロムの『自由からの逃走』を読む前に、内容を知っておきたい。」
「実は自由であることを恐れている私たちの心理について知りたい。」
「他の読者がこの本から学んだことについて、読みたい。」
このような悩みを持つ方に、エーリッヒ・フロムの名著『自由からの逃走』から私が学んだ3つのことをご紹介します。
この記事で書いていること
- 私たちは心の底では自由を恐れている?
- なぜ自由から逃げていることに無自覚なのか?
- 本当に自由な人生を歩むには?
時代を経ても変わらない私たちの深層心理について書かれた、共感させられる古典です。
フロムの名著「自由からの逃走」とは?
『自由からの逃走』は、ドイツの心理学者であるエーリッヒ・フロムが、人間が「自由」に対していだく心理について書いた古典です。
しかし、「私たちは本当に自由を欲しているのか?」「私たちが自分の欲求でしていると思っていることは、本当にそうなのか?」という世界をひっくり返すような問いを投げかけているのが、本書です。
私たちは無意識に服従することを好む?
フロムがこうに主張する理由は、自由はしばしば孤独や不安と隣り合わせでもあるからです。もしも完全な自由を得たとしたら、私たちは戸惑い、何かにすがりたくなるのではないでしょうか。
本書ではそのような人間心理を分析しており、次のようなことを学ぶことができます。
- 私たちは心の底では自由を恐れ、服従することを好んでいる。
- 自由に選んでいると考える多くのことは、実は外から押し付けられた欲求である。
- 自由で、かつ孤独でもない状態にはどうやったらたどり着けるのか?
自由の時代を賢く生きる
いろいろな時代を読まれ続けてきた本だけに、今の私たちでも共感し、はっとさせられる内容がたくさんあります。
そして、これからも技術やアイデアの多様化によって、自由はさらに加速していくと思います。その混乱に負けずに自由の道を歩むための、助けとなってくれるはずです。
この記事では、私が本書で学んだことを3つにまとめてご紹介します。
- 自由はなぜ恐ろしいのか?
- 人は自由から逃げていることになぜ無自覚なのか?
- 本当に自由な人生を歩むためには?
みなさんが本書に興味を持ち、手にとる際の参考になれば幸いです。
自由からの逃走①「私たちが自由を恐れ理由」
まずひとつ目に、私たちが実は自由を恐れてしまうメカニズムです。
この前提としてフロムは、人間がもっとも辛いことのひとつは、孤独だと言います。なぜなら、私たちは他人との協力なしに生きていくことができないからです。
どのような文化のもとでも、人間は生きようとするかぎり、敵や自然の脅威から自分を守るためにも、あるいは働いたり生産したりすることができるためにも、他人と協同することが必要である。
「自由からの逃走」, エーリッヒ・フロム著, 日高六郎訳
そこで人間は、歴史的にも様々なものに所属し、服従してきました。これらは、ときに自由を制限するものですが、孤独というもっとも辛い苦しみからは抜け出すことができます。
また服従することは、物質的な必要を満たしてくれると同時に、大きなものの一部になることで精神的な安定感や、帰属感を与えてくれる側面ももっていました
自由になったけれど、孤独はしんどい
そこから、人々の生活は経済的、制度的に自由になっていきます。すなわち、産業が発達して生活はゆたかになり、平等に仕事を選ぶこともできるようになりました。
しかし、それによって人々が出会うのが、自由にともなう孤独感や無力感、不安感でした。
この理由のひとつは、自由になることで私たちはしばしば「この世界と比べたひとりの人間のちっぽけさ」という当たり前かつ恐ろしい事実を実感するからです。
たとえぼんやりとはしていても、死や病気や老衰を意識することによって、人間は宇宙や「自分」以外のすべてのものと比較して、自分がどんなに無意味で卑小であるかを感じないわけにはいかなくなる。(中略)人間はみずからをを一片の塵のように感じ、かれの個人的な無意味さに押しつぶされてしまうであろう。
「自由からの逃走」, エーリッヒ・フロム著, 日高六郎訳
また、自由に成功できるということはつまり、成功しないことは自分のせいであるというプレッシャーにもなります。これにより、平均的な生活をおくる大半の市民たちは特に、大きなストレスを抱えるようになりました。
無意識の自由からの逃走
その結果、私たちは自由であることをよろこびつつ、心の底では服従するものを求めるという状態におちいりました。
近代以降、私たちが特に服従するようになったものは、「お金や資本を蓄える」という自分の外にある目的でした。それにより、人々は熱狂的に仕事をするようにもなりました。
身近なところでも..
このような心理ゆえの行動は、私たちの日常の中にも見つかるのではないでしょうか?
誰かのためにする奉仕や貢献は美徳でもありますが、もしかすると、なにかに従属して安心感を得たいという無意識があるかもしれません..。
自由からの逃走② 「逃げていることに無自覚な理由」
続いて、フロムが主張する1つの問題についてです。それは「人々は自由から逃げていることに自分で気づいていない」という問題です。
なぜなら、人はあまりにも簡単に、他人から押し付けられた要求を、自分の欲求だと勘違いしてしまうからだと彼は言います。ここでは簡単に、そのような問題が起こる3つの理由を説明します。
①透明の権威に代わった
1つ目の理由は、私たちが服従する対象が、より見えにくいものになっているからです。本書では、世論、常識、良心、科学といったものが挙げられていました。
それに加えて現代では、インターネット広告、SNSからの反応、スマホなどの先端技術なども含まれるのではないでしょうか。より巧みに私たちを従えている印象を受けます。
②教育の影響
また、「自由に生きるべきだ」とみんなが思いながらも、私たちが大きな影響を受ける教育において自由が尊重されていないことも原因の1つかもしれません。自分の感情を抑圧することは、当たり前のように教えられることを、フロムも指摘しています。
子どもは教育の早い時期に、まったく「自分のもの」でない感情をもつように教えられる。とくに他人を好むこと、無批判に親しそうにすること、またほほえむことを教えられる。
「自由からの逃走」, エーリッヒ・フロム著, 日高六郎訳
③この問題はあまりに恐ろしすぎる
そして3つ目に、この問題が大きすぎるあまり、目を逸らしているという理由です。
これらの疑問は、一旦起きると驚くべきものとなる。というのはそれらは人間の全活動をささえる土台そのもの、すなわち、かれの欲するものについての知識を問うているからである。
「自由からの逃走」, エーリッヒ・フロム著, 日高六郎訳
この問題と向き合うための時間や覚悟をもつことは、なかなか骨が折れそうです..。
それは本当に自分の欲求か?
自分のものだと思っている欲求が、実は外から求められる要求をインストールしたものではないか。きちんと考えようと思いました..
自由からの逃走③「自由と向き合うために」
これまでの内容をふまえると、「本当に自由に生きるにはどうすればいいのか?」「いや、自由と孤独がいつでもセットなら、むしろ服従する方がいいのではないか?」という疑問が湧いてくると思います。
そこで最後に、私が受け取った、これらの答えとなる本書のメッセージをご紹介します。
自由でありながら、孤独ではない道
まず、自由と孤独とはいつでもセットなのかというと、どうやらそうではないみたいです。フロムは本書で、「本当の自分の欲求にしたがった自発的な行為をするとき、人は自由でありながら孤独ではない状態になることができる」といいます。
なぜなら..
この理由は、実は本書の中ではわかりやすく述べられていませんでした。しかし、おそらく次のような理由ではないかと私は考えています。
「自分のうちから出てくる本当の欲求は、自分でもどうしようもなく生まれてくるものである。つまり、それは自分を超えた大きなものによって決定されている。」
そのため、本当に自発的な行為をすることで、自分を超える大きなものと、ある種のつながりを感じられ、孤独感を克服できるのではないでしょうか。
ここについては、ぜひ皆さんのご意見もお聞きしたいです..
本当に自発的な行為をするには?
それでは、本当の欲求にしたがった自発的な行為をするにはどうするといいのでしょうか。
そのためには、自分の生活について「これは本当に自由に選んでいることか?」という面倒で恐ろしい問いと向き合うことだと思います。また、そのヒントとして、自発的な行為には次の2つの性質があることが本書からわかりました。
① 創造的であること
フロムは自発的な行為について説明するとき、「創造的」というキーワードを繰り返し用いています。つまり、自発的な行為には、何かを新しく作る、表現するという要素が含まれていると考えられます。例えば、こんな感じに。
- 自分で自由に計画を立てたり、解決方法を考えたりする活動
- 自分のアイデアで文章や絵をかいたり、ものを作ったりする活動
この理由は、私たちは何かを新しくつくるときに、自分の中から引き出した自由な工夫やアイデアを用いるからだと思います。反対に、なにかを消費するような活動は、けっきょく他人の作ったものを売り込まれていることが多いかもしれません。
② 過程が大切であること
自発的な行為の2つ目の性質として、その行為の結果ではなく、経験そのものから満足が得られること、ということも挙げられます。
これは直感的にわかりやすい性質ですが、社会ではその逆がいつも強調されていると、フロムも指摘しています。
その行為自体を目的として行っていることが、まったく見当たらない人もいるのではないでしょうか..
これらの性質をもとに、自分の生活の中に自発的な活動があるか、そして自由を取り戻すことができないか、考えてみる際の助けになれば幸いです。
まとめ
この記事では、エーリッヒ・フロムの心理学の古典『自由からの逃走』について、3つのテーマについてご紹介しました。
- 自由はなぜ恐ろしいのか?
- 人は自由から逃げていることになぜ無自覚なのか?
- 本当に自由な人生を歩むためには?
古典なだけあり、今の私たちも変わらず抱いている心理を分析しています。
これからもどんどん物質的な自由が増えていく世界で、自由とどう向き合うかを考える助けになってくれる本だと思います。素晴らしく、そして面白い本なので、興味のある方はぜひ手にとってみてください。
この記事がみなさんのお役に立てれば幸いです。