【THW ban tobacco.】古典モーションをわかりやすく解説する【バンタバ】
英語ディベートで最も基本的なモーションのひとつ。
“THW ban tobacco.(政府はタバコを禁止するべきだ。)”
通称バンタバ。
「英語ディベートで初めてこの論題をやったけれど、ちゃんと復習したい。」
「後輩ディベーターにこの論題をちゃんと教えれるようになりたい。」
このような悩みを持つ方に、この記事では、バンタバをわかりやすく解説します。
この記事で書いていること
- THW ban tobacco.の概要
- 肯定側のアーギュメント
- 否定側のアーギュメント
THW ban tobacco. の概要
「タバコを吸う」という国民の選択の自由を、政府が制限するかどうか議論するこちらの論題。
「政府が国民の自由に介入してもいいのか」という議論には、基本的に以下のような原則があります。最初はこの部分について解説していきます。
政府は国民の自由を守るべき
基本的に、政府は国民の自由を守るべきです。その理由は、以下のように説明することができます。
政府(政治家)は国民によって選出され、国民のお金(税金)を使って運営されるため、国民の幸せを守る義務がある。 しかし「その人にとって何が幸せか」はひとりひとり違い、それは本人にしかわからない。そのため、政府は国民が自分にとっての幸せを実現できるよう、選択の自由を守るべきである。
このモーションでは、否定側のアーギュメントの前提となります。
自由が制限される正当性
一方で、自由だからといって国民はすべてが許されているわけではありません。一般的に、以下のような場合、政府が介入することが正当化されます。
- 合理性のない選択の場合
- 第三者に危害が及ぶ場合
合理性のない選択というのは、情報や能力の欠如により本人がきちんと判断できない、何らかの要因でその選択を強制されている.. などの理由で、選択がその人にとって不利益になるような場合です。例えば、未成年の飲酒・喫煙・ギャンブル等が禁止されているのは、自分で判断する能力が未熟だからです。
第三者に危害が及ぶ場合というのは、他人に迷惑をかけることはしてはいけない、ということです。殺人や窃盗など、想像しやすいと思います。
このモーションでは肯定側のアーギュメントの前提となります。
それでは、それぞれのサイドが何を話せばいいか、解説していきます。
THW ban tobacco. の肯定側
肯定側は基本的に、政府が国民の自由を制限できる2つの基準を満たしていることを説明すればOKです。つまり、このようなアーギュメントになると思います。
- タバコを吸うことは、合理性のない選択である。
- タバコは第三者へ危害をもたらす。
順番に解説します。
① タバコを吸うことは非合理的な選択である
「タバコを吸うことは、非合理的です。なぜなら、強い依存性があり自分の意思に反して吸ってしまう上、大きな健康被害があるからです。」
ということを主張します。このとき否定側は、「タバコの害を承知した上で吸っているのだから、問題ない。」という主張をしてくるので、それを踏まえた上で、実際にタバコの害を予測することの難しさをイラストしながら説明するといいと思います。
例えば、こんな感じです。
- 健康被害を情報として知っていても、自分で経験するまではその苦しさは本当にはわからない。
- 健康被害が表面化するのは、喫煙開始から数十年かかるため、後悔したときに取り返しがつかない。
- 多くの人は、先輩や友達に誘われて吸い始めたり(断りにくい)、映画などへの憧れから「一本くらい大丈夫か」と軽い気持ちで始めてしまう。
タバコの健康被害について
また、なぜこのアーギュメントが重要なのか?を説明するため、タバコの健康被害についてもしっかり説明しましょう。依存性を持つ化学物質の名前、引き起こす病気についても、いくつか例をあげられるといいと思います。
タバコ三代有害物質 ┗ ニコチン(nicotine) ┗ タール(tar) ┗ 一酸化炭素(Carbon monoxide)
タバコが引き起こす病気 ┗ 肺がん(lung cancer) ┗ 脳梗塞(cerebral infarction) ┗ 心筋梗塞(Myocardial infarction) ┗ 脳出血(cerebral bleeding) ┗ くも膜下出血(Subarachnoid bleeding) ┗ 胃がん(stomach cancer) ┗ 口腔がん(oral cancer) ┗ 歯周病(periodontal disease)
このような健康被害を説明した上で、「健康がなぜ国民の幸せにとって重要か?」という説明も必要です。例えば、次のように説明することができると思います。
健康が重要な理由は、健康を害することで、その他の多くの選択が制限されることになるからです。 例えば、病気にかかってベッドの上でしか生活できなくなると、働く自由、趣味を楽しむ自由、旅行する自由、大事な人に会いにいく自由、レストランでおいしいものを食べる自由など、多くのやりたいことをする自由を失います。そして、これらから得られる幸福を失うことになります。
② タバコは第三者への危害をもたらす
「タバコは副流煙による受動喫煙により、非喫煙者への健康被害をもたらす。」
ということを主張します。否定側としては、「分煙を徹底するので、それは問題ない」という主張をしてくるはずなので、それを踏まえた上でアーギュメントを立てましょう。
例えば、こんな感じです。
- 路上喫煙などは(ゴミのポイ捨てや痰を吐くなどと同じ)軽犯罪に分類されるが、このような犯罪は取り締まるのが難しく、ルールを守らない人が多い。
- その場で喫煙していなくても、衣服や髪などについた有害物質で受動喫煙と同じ効果が起こる。
- 公共の場で分煙できても、家の中などのプライベートな場所ではできないため、家族やパートナーの喫煙で被害を受ける人がいる。
医療コストの増加
また、タバコによる健康被害により、国全体でたくさんの医療コストがかかっています。ここから、第三者への危害を説明することもできます。
受動喫煙ほどタバコに固有な話ではありませんが、アーギュメントのひとつになり得ます。
このように、肯定側は「タバコを吸う自由」を制限する正当性を話します。
続いて、否定側のアーギュメントです。
THW ban tobacco. の否定側
バンタバの否定側は「何が幸せかは人によって違うため、政府は国民の自由を守るべきである。タバコを吸う自由を奪われると、苦しむ人たちがいる。」という主張をしていきます。
たとえば、次のようなアーギュメントを立てることができます。
- 政府は選択の自由を守るべき
- タバコを禁止されると苦しむ人がいる
- ブラックマーケットができる
順番に解説していきます。
否定側のモデル
その前に、否定側が立てるモデルを解説します。この論題の否定側は、モデルで肯定側のアーギュメントをできるだけ削る必要があります。具体的には、以下のようなことを話すといいと思います。
- 分煙を徹底し、ルールを破る人には厳罰を科す
(受動喫煙の防止) - タバコの健康被害に関する情報を、パッケージに載せることを義務化する
(合理的な選択の補助) - 禁煙のサポートは現状で様々な機関で受けられるし、政府がそれを支援する
(合理的な選択の補助) - タバコに含まれる化学物質の上限量を、政府が設定する
(健康被害の低減)
① 政府は選択の自由を守るべきである
「何がその人にとって幸せか?はみんな違っていて、その人にしか判断できない。だから、国民の選択を尊重するべきだ。」
という原則を主張していきます。
そもそも、健康が大事という価値観すら合理的とは限らない、健康を犠牲にして快楽を得るのもひとつの自由であり、それを禁止するのは価値観の押し付けだと考えることもできます。
また、肯定側の主張する、自由が制限が正当化される2つの基準について、分析をぶつけていきましょう。
① タバコは合理性のない選択ではない
実際、タバコの危険性は多くの人が知っているため、それを説明していきます。
- タバコの健康被害は、学校などで繰り返し教えられており、小学生ですら理解している。
- 喫煙者は、健康被害があること、依存性があることに同意した上で喫煙している。
- タバコをやめたい場合、禁煙する方法(様々なサポートなど)も用意されている。
② 第三者への危害を減らす
分煙の徹底化は、モデルでしっかり話します。また、プライベートな場での受動喫煙などに対しては、以下のような反論が挙げられます。
- 家族などの身近な大事な人に対して、健康を害するような行為をする人は少ない。
- プライベートな場は自由な場であるから、そこで起こる被害に政府が責任を持つ必要性は薄い。
② タバコを禁止されると苦しむ人がいる
「毎日大きなストレスを抱えている人にとって、タバコは唯一のストレス緩和方法であり、これを禁止されることは大変な苦痛になる。」
という主張をしていきます。大きなストレスを抱えている人は、例えばこのような人が挙がられると思います。
- 毎日、一日中仕事をする必要がある人(貧困やブラック企業など..)。
- 社会的な差別など(セクシャルマイノリティーや人種差別)に苦しんでいる人。
- そうでない人でも、基本的にみんな将来への不安・人間関係のトラブルなどを抱えているもの。
このような人たちにとって、タバコがストレス解消の方法として実際に優れている点もあります。例えば、以下のように説明可能です。
禁止した後に何が起こるか?
この論題をとった後に何が起こるか(AP)の分析も大切になります。タバコが禁止されたとしても、人々のストレスは変わりません。解消されないストレスは、例えば以下のようなよくない状況を引き起こすことも説明しましょう。
- アルコールなど、他の解消方法に過度に頼るようになる。(酔いによる不適切な行動を引き起こしたり、仕事に支障が出るようになる。)
- 暴力的になり、周囲の人々に危害が生じる。
- ストレスによる鬱などを引き起こす。(最悪の場合、命を断つことも。)
③ ブラックマーケットの発生
最後に、ブラックマーケットに関するアーギュメントです。
ブラックマーケットとは、「闇市」のことです。法律で禁止されている物品が、不正に取引されるマーケットのことを指します。他の論題でも使用できるアーギュメントなので、覚えておくといいと思います。(THW organ allow transplants for profit.など。)
この論題の場合、ブラックマーケットによって起こる被害は主に2つあります。
- 利益が犯罪組織やマフィアの資金源となり、犯罪が活発になる。
- ブラックマーケットで取引されるタバコから、より大きな健康被害が生まれる。
特に2つ目に関して、ブラックマーケットで取引されるタバコには、喫煙者を依存させるため、法外な量の有害物質を含んだものも存在します。それにより健康を大きく害します。
また同時に、健康被害を受けても病院に行くことができないという問題も起こります。なぜなら、闇市でタバコを買うことは違法行為であり逮捕されてしまうからです。そのため、病気になっても治療ができず、ずっと苦しみ続けることになります。
このような問題が起こるのであれば、比較的安全な量のタバコが許されている状態の方が、健康を守ることができるとも考えられます。
まとめ
以上が、THW ban tobacco.のモーション解説となります。
古典モーションのため、何度か出会う確率も高いと思います。
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。