【大衆の反逆】賢く誇りたかい貴族的な生き方のわかる名著【古典を読む】

読書

「古典を通して、自分の生き方について考えたい。」
「使命感をもって、自分の人生を特別なものにしたい。」

このような悩みを持つ方へ、オルテガ・イ・ガセットの社会論の古典「大衆の反逆」から学んだ、誇り高く生きるための考え方をご紹介します。

 この記事で書いていること

  1. オルテガの名著『大衆の反逆』とは?
  2. 高貴な人は「自分に困難を課している」
  3. 大事なのは「人生と正面から向き合っているか?」

何度か読み返している、私の好きな古典のひとつです。

オルテガの名著「大衆の反逆」とは?

『大衆の反逆』はスペインの哲学者オルテガが、現代で権力をもちはじめた大衆について書いた、社会論の古典です。

初めてタイトルを聞く方も多いと思いますが、本書はこのような方におすすめの本だと思います。

  • 使命感をもち、何かを成し遂げたいと思っている人
  • ただの安楽な生活ではなく、緊張感を持った人生をのぞむ人
  • 生き方について考えていて、新たな視点やアイデアがほしい人

本書が教える「大衆」と「貴族」

本書がこのような人におすすめの理由は、人々の性格や考えを「大衆」と「貴族」という2種類にわけて分析し、自分がどう生きたいかを考えさせてくれるからです。

また、「人生ってそもそもどういうもの?」という本質的な話もしており、迷いや不安を感じる方に役に立つかもしれません。

高貴に生きる勇気をもらえる

ちなみに著者は、使命をもった貴族的な生き方をおすすめしているようです。そのため、このような生き方に共感する方は勇気をもらえると思います。

しかし、そうでない方も、大衆と貴族という斬新な視点で考えを見つめなおすことはなかなかないと思います。そのため、新しいアイデアを得られるかもしれません。

ここからは、本書の概要について説明したあと、私の印象にのこった「大衆と貴族」の違いをご紹介します。この本に興味をもち、手にとる際の参考になると幸いです。

大衆の反逆①「本書の概要」

まず、本書の概要です。

Point 1

オルテガは、「大衆」と呼ばれる新しい性格をもつ人たちが社会を台頭するようになったことを本書で主張しています。

大衆の性格を一言であらわすと、「自分たちに権利はあっても、義務はない」と思い込んでいる人たちです。

彼らにあるのは欲求だけであり、自分には権利はあるが義務があるとは思ってもいない。
「大衆の反逆」, オルテガ・イ・ガセット著, 佐々木孝訳

大衆が出現した背景

このような人たちが現れた理由は、生活が急激にゆたかになった近代以降にあります。

この時代、産業の発達により、人々は物質的に満たされるようになりました。また、政治に参加するなどの多くの権利を、庶民も平等に得られるようになりました。

これらは、とてもいい変化です。

しかしその反面、「みんなと同じである自分もその権利を当然得られるはずだ」と人びとは考えるようになりました。そして、みんなと同じであることに満足しつつ、本来は努力や義務と引きかえに受けとるものを、当たりまえに要求するようになりました。

その結果、社会のモラルの低下や混乱を引きおこしていると、著者は語っています。

大衆と貴族の区別

また、大衆との対比により、その反対の「貴族」な性格を持つ人びとについても、本書で明らかになっています。後でくわしく説明しますが、一言でいうと自ら義務を引き受ける人たちです。

ちなみに1つ注意点ですが、オルテガの考える大衆と貴族は、身分の違いではなく、精神的な違いのことです。

したがって社会を大衆と優れた少数者とに分けることは、社会階級による区別ではなく、あくまで人間としての区別なのであって、上層階級と下層階級という序列ではない。

「大衆の反逆」, オルテガ・イ・ガセット著, 佐々木孝訳

そのため、社会的なエリートの中に大衆がいることも、貧しい人の中に貴族がいることもあることがわかります。

以上が本書の概要です。ここから「大衆と貴族」の性格の違いを、2つ紹介していきます。

大衆の反逆②「自らに要求をしているか?」

Point 2

まず、私が印象的だった大衆と貴族の違いは、自分に多くの要求をしながら生きているかという点でした。

人間に対して為され得る最も根本的な区別は次の二つである。一つは自らに多くを要求して困難や義務を課す人、もう一つは自らに何ら特別な要求をせず、生きることも既存の自分の繰り返しにすぎず、自己完成への努力をせずに、波の間に間に浮標のように漂っている人である。

「大衆の反逆」, オルテガ・イ・ガセット著, 佐々木孝訳

つまり、後者の「自分の権利や安楽さばかり気にかけている..」というのが大衆の性格の特徴になります。

大衆の性格の特徴

このような性格が生まれる理由は、繰り返しになりますが、私たちの生活を可能にしてくれるモノごとを、ついつい当たり前だと感じてしまう忘恩にあります。

それは例えば、社会制度やテクノロジー、歴史であり、またそこに参加してくれた人々です。

社会がゆたかになるほど、これらは複雑になっていきます。そのため、自分たちを支えてくれるものを理解して感謝することは、むずかしくなっていきます。

貴族な性格の特徴

そして、反対に貴族的な性格とは、社会や後世のために、あえて自分に義務を課している人です。

彼らがこうする理由は、自分たちの生活の背景を理解し、「受け取るばかりではスジが通らないな」と考えるからだと思います。そのため、彼らは時代に参加するという義務を負います。

実際に成しとげられることは様々ですが、その大小にかかわらず、この義務感をもっている人が貴族のようです。

貴族的な生き方のいい面

本の読者「それなら、貴族な生き方は面倒くさいし、他人のために生きるのは損ではないか?」

私もこう思いました。

しかし、「自分以外のものへの義務」の良い面を聞くと、こちらの生き方にも1歩踏みだしてみようかなと思えました。それは、人生に形や秩序をあたえてくれることです。そして反対に、自分のためだけに生きることは、出口のない迷宮となります。

私にだけ重要な生であっても、何かに捧げていなければ緊張も「形」も持たずにばらばらになってしまうものでもある。(中略)もし私が、私の生の内部でだけ自己中心的に歩くつもりなら、進むこともなく、どこにも行けないだろう。

「大衆の反逆」, オルテガ・イ・ガセット著, 佐々木孝訳

この理由は、大衆の特徴のひとつが「本質的にはみんなと同じである」からだと思います。みんなと同じであるところの自分のために生きても、生きる甲斐がないなあ、と虚しくなってしまうのではないでしょうか。

大衆の反逆③「正面から向き合っているか?」

Point 3

もうひとつの印象的だった貴族と大衆の違いは、人生をどう生きるかという問いに正面から向き合っているか、になります。

この点が大事な理由は、人生はそもそも、混乱の中で決断をせまられつづけるタフな活動だからです。

貴族な性格の特徴

その中で貴族だけができることが、自分はどう生きるのかを常に考え、そして結局は迷い続けること、だといいます。

明晰な頭脳の持ち主とは、(中略)生を正面から見据えそしてそこで問題となるすべてを引き受け、しかも結局は自らを迷える者だと感じている人のことなのだ。それが現実である。

「大衆の反逆」, オルテガ・イ・ガセット著, 佐々木孝訳

なぜなら、自分の存在そのものについての問いに向き合うには、大きな勇気やエネルギーが要るからです。そして、結局はどこまでも答えがなく、迷いつづけるものだからです。

大衆の性格の特徴

一方、大衆的な人の特徴として挙げられるのが、まるで何も迷っていないかのような「きっぱりした口調」や「羨ましいほど落ち着き払った態度」だといいます。

彼らがそう見える理由は、この問いが恐ろしいあまり向き合うことを避け、明快な態度で自分をごまかしているからです。

あなたは彼らが自分自身や自分たちの環境についてきっぱりした口調で話しているのを聞くと、まるで何についてでも何か考えをもっているかのように思えるかもしれない。しかし、それらの考えを少しでも分析してみるなら、一見して彼らがもっともらしう言及しているのは、現実を何ら反映したものでもないし、さらに分析を深めれば現実に適合させようとすらしていないことに気づくだろう。

「大衆の反逆」, オルテガ・イ・ガセット著, 佐々木孝訳

迷っていてもいい

私がこの点を印象的に感じたのは、持っていたイメージと反対だったからです。

ものごとを成し遂げる人は、自分の道を迷わず、自信をもって突き進んでいるのではないか。

最初はこのように思っていましたが、むしろ迷う勇気のある人が貴族であることがわかりました。迷っている状態は不安で不快です。ですがそんな時に、本書の言葉が安心や勇気をくれると感じました。

まとめ

この記事では、オルテガ・イ・ガセットの古典「大衆の反逆」についてご紹介しました。

  1. オルテガの名著『大衆の反逆』とは?
  2. 高貴な人は「自分に困難を課している」
  3. 大事なのは「人生と正面から向き合っているか?」

普段は考えないような視点で、自分の性格を見ることができる面白い本です。ここで紹介している内容は、本書の一部分であり、また個人の解釈も含まれます。

興味を持たれた方は、ぜひ手にとってみてください。この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。