【民衆の芸術】芸術の目的を考えるヒントになるモリスの名著【古典を読む】
「芸術とはなにか、という問いを考えたい。」
「毎日の仕事を楽しくする方法に興味がある。」
「ウィリアム・モリスの『民衆の芸術』について、他の人の感想を知りたい。」
このような方に、イギリスの芸術家ウィリアム・モリスの古典『民衆の芸術』を読んで、考えたことをご紹介します。
この記事で書いていること
- ウィリアム・モリスの『民衆の芸術』とは?
- モリスの説く「芸術の目的」とは?
- 『民衆の芸術』から私たちへのメッセージ
私も本書を読んで、「芸術とはなにか?」に対するひとつの考えを見つけました。
ウィリアム・モリスの「民衆の芸術」
ウィリアム・モリスは、1800年代に活躍したイギリスの芸術家です。インテリアなどのデザイナー、詩人や作家としても活躍しました。また、彼はアーツ・クラフツ運動と呼ばれるデザイン運動をリードした活動家でもありました。
アーツ・クラフツ運動とは?
この運動は、「産業革命により大量生産で作られた粗悪品があふれる社会を批判し、芸術と生活の統一を目指したもの」になります。
工場で作られた製品ではなく、職人が手仕事でつくった工芸品こそ、私たちの生活にあるべきだと主張したのです。
そんなモリスが講演した内容をまとめたものが、『民衆の芸術』になります。次のような、彼の芸術や社会に対する考えを知ることができます。
- 芸術の目的とは?
- 資本主義のなかで芸術はどのように失われたのか?
- 芸術を実践するために必要な徳とは?
ここから、本書の内容と、私が受けとったメッセージをご紹介します。
モリスの説く「芸術の目的」とは
まず、最初にうけた本書の印象は、モリスが「芸術」と「労働」の2つを深く結びつけて考えていたことでした。
なぜなら、モリスの説く芸術の目的とは、「労働の喜びを表現し、日々の労働を幸福にする」ことだからです。
私の理解する真の芸術とは、人間が労働に対する喜びを表現することである。その幸福を表現しなくては、人間は労働において幸福であることはできないとおもう。
「民衆の芸術」, ウィリアム・モリス著, 中橋一夫訳
労働を幸福にする
モリスがこのように主張する理由は、この世に生きるすべてのものは働かなければいけないからです。私たち人間も、動物も。
生きるかぎり労働はすべきものであり、だからこそ仕事を楽しくするために、芸術が生まれました。
労働の中の芸術
例えばモリスは、「食器のような日用品を作る職人が、その中に遊び心で入れる装飾」を芸術の例として挙げています。これらは、彼らが毎日の仕事を楽しくするために入れたものでした。そして、そのような過去の日用品が、現在は芸術品として美術館に飾られています。
本書には書いてありませんが、他にこのような例も思いつくことができます。
- 人々は狩猟の成功を祈り、壁画をえがいた。
- 田植え作業を楽しくするために、民謡を歌った。
- 戦いで仲間を奮い立たせるために、物語を作った。
芸術というのは本来、芸術家という職業がない時代から、民衆の労働の中で作られたものでした。
「民衆の芸術」からのメッセージ
そして、ここから次のようにも言えるかもしれません。
私たちが日々の労働を幸福にするために作り出すすべてのものは、芸術である。
つまりは、私たちが仕事のモチベーションを上げるため、仕事で疲れた自分を癒すために作り出すものは、その目的からいって紛れもなく真の芸術ではないでしょうか。
どんな小さなことでも、すべてです。
これらのものも芸術として考えることができるのです。そして、このことに気づき、私の考え方も次のように変わりました..。
- 芸術というものが身近に感じられた。(落書きですら芸術になるのか!)
- 積極的に自分の仕事を幸せにしようと思えた。昔の人はいつもそうやってきたのだから。
- 真の芸術にスキルや技量はそこまで重要ではないと気づいた。大事なのは目的である。
芸術の減った現代で
同時に、この芸術の考え方はとても大事だと思いました。なぜなら、資本主義社会の労働には昔あったような芸術が減り、そのぶん仕事も辛いものになっているからです。
大量生産の工場で、自分なりの工夫などしたら上司に怒られてしまいます。効率を追求する今の社会では、どの職場でも似たようなことが起こっているかもしれません。
だからこそ、小さなことでも自分の芸術をつくり出すことを意識できれば、日々の仕事を幸せにできるのではないでしょうか。
まとめ
この記事では、ウィリアム・モリスの『民衆の芸術』の感想をご紹介しました。本書では、他にも次のようなテーマについて著者の考えを知ることができます。
- 芸術を破壊した原因である「機械化」と「独占」とは?
- 芸術を実践するためには「誠実」と「簡素な生活」が大事だ!
資本主義の負の側面にも気づかせてくれる話もしています。気になる方は、ぜひ本書を手にとってみてください!