ディベートで強い立論をするコツ【結論:メカニズムとインパクト】
「ディベート初心者だけれど、立論をうまく詰められている気がしない。」
「ディベートで勝てる強い立論ができるようになりたい..」
このような悩みを持つ方に、この記事では競技ディベートで勝てるようになるための立論のコツを書いていきます。
この記事で書いていること
- 立論で大事なのは「Why true?」と「Why important?」
- 「Why true?」を考えるには「SQ・AP思考」
- 「Why important?」を深めるには「質」✖️「量」
この記事を書いている私は、即興型英語ディベート歴2年。立論について気がついた事をシェアしていきます。
立論で大事なのは「Why true?」と「Why important?」
立論を考える上で大事なのは、「本当にそうなるのか?」と「どうしてそれが大事なのか?」という二つの視点です。ディベート用語ではそれぞれ、「メカニズム」と「インパクト」と言います。
この二つが大事な理由は、あるアイデアに対して人間が持ちうる主な疑問だからです。そのため、ディベートが終わったときにこの二つの疑問が解消されていなければ、聞き手はあなたの説明に納得感を持つことが難しいのです。この二つの観点をスタート地点にして立論を組み立てることで、簡単に必要条件を満たした立論を組み立てることでできます。
「Why true?」と「Why important?」の具体例
簡単な例として、「THW ban tobacco.(政府はタバコを禁止にするべき)」の肯定側の立論を、この二つの視点で組み立ててみます。
一番に思いつく主張としては、「人々の健康を守ことができる」ですね。これを「Why true?」と「Why important?」で考えた場合、次のようになります。
- 主張
:タバコを禁止にすることで人々の健康を守ことができる。 - Why true?(どうして人々の健康を守ることができるのか?)
:タバコには有害な物質(ニコチン、タールなど)が多く含まれていて、肺がんや脳卒中などの深刻な病気を引き起こす。 タバコを禁止にすることで、人々はタバコを入手することができなくなり、その結果健康を守ことができなくなる。 - Why important?(どうして人々の健康を守ことが大事なのか?)
:健康は、人々の長期的な幸福に関係する重要な要素である。しかし、人々は目先の短期的な快楽につられて、これを疎かにしてしまいやすい。そのため、国家が介入してこれを守る必要がある。
「本当にそうなるのか?」と「どうしてそれが大事なのか?」を基準に考えることで、アイデアも思いつきやすくなります。
それではここからは、「Why true?」と「Why important?」を深める上で大切なことをそれぞれ解説していきます。
「Why true?」を考えるための「SQ・AP思考」
ここでは、「Why true?(メカニズム)」の観点を考える上で必要な事を話していきます。結論から言うと、「SQ・AP思考」です。
「SQ・AP思考」とは
「Why true?」を考えるには「SQ・AP思考」が大切です。この2つの言葉は、ディベート初心者の方も聞いたことがあるのではないでしょうか。
SQは「Status Quo(現状)」の略で、APは「After taking this Plan(この提案を採用した後)」の略になります。肯定側では、提案(モーション)をとることでAPがSQより良い世界になる事を説明します。一方で、否定側ではAPがSQよりも悪い世界になる事を説明します。
SQとAPは現在地と目的地
「Why true?(メカニズム)」を考える上で「SQ・AP思考」が大切な理由は、現在地と目的地が決まらなければ、道順を説明できないからです。
メカニズムとは「SQからAPへの変化が起こる事を証明する作業」です。その提案(モーション)をとることで、現状の世界(SQ)から提案をとった後の世界(AP)に本当に変化するのか、ということを説明するのです。そのため、現在地と目的地をはっきり定めることが最優先事項になります。あとはその道順を、順を追って説明していけばOKです。
具体例
先ほどの「THW ban tobacco.」の肯定側の立論で、「Why true?」の内容をSQ・AP・メカニズムに分けてみます。
- SQ
:たくさんの人がタバコで健康を害している - AP
:タバコによる健康被害をなくすことができる - メカニズム
:禁止にすることで、物理的にタバコの入手が困難になる。また、法を犯してまでタバコを吸おうとするのは、心理的にも抵抗が大きい。そのため、喫煙習慣を強制的になくすことができ、タバコを吸わなくなる。
メカニズムを説明するステップは、論理的な考え方が求められます。ディベートで論理的思考力が必要と言われるのは、まさにこのような「Why true?」を常に証明しなければいけないからです。
続いて、「Why important?」を深める時に気を付けることを解説していきます。
「Why important?」を深めるには「質」✖️「量」
「Why important?」にあたる内容を、ディベートではインパクトと言います。ここで皆さんに、インパクトを定義する式を伝授します。それがこちらです。
インパクト = Significance(重要性)✖️ Possibility(発生数)
簡単に言うなら、「量」✖️「質」です。つまり、より重要であることを伝えるためには、その問題が「どのくらい深刻なことなのか」とその問題が「どのくらいたくさん起こるのか」と言う観点で広げていけばいいわけです。
この二つが重要である理由は、私たちは全ての問題に対処することができないからです。例えば、「地球に隕石が落ちて人類が滅亡する」という危機は、とても深刻です。しかし、起きる可能性はすごく小さいため、毎日隕石を気にして生活している人はいないでしょう。
一方で「蚊に刺されて痒い」ということは比較的多く起こる問題ですが、多く人にとっては些細なことです。これも、真剣に悩んでいる人は少ないはずです。このように、私たちが重要視する問題は「ほどほどに深刻で、ほどほどによく起こる」ことなのです。
ここからは、「質」と「量」を大きく見せるコツをそれぞれ説明します。
インパクトのコツ① 「SQ」を下げて「AP」を上げる
インパクトのうち、「質」を大きく見せるコツは、先ほっど説明したSQとAPの差分を広げることです。
つまり、肯定側ならその提案をとる前の状態をより悪く、とった後の状態をより良く説明します。否定側はその逆です。現在地と目的地が離れているほど、その提案をとる意味は大きいのです。
インパクトのコツ② 具体例で「身近に起こる感」を出す
インパクトのうち、「量」を大きく見せるコツは、具体例に力を入れることです。問題が起こっている場面を聞き手に想像させてください。より身近で、頻繁に起こりそうな場面を設定します。そうすることで、聞き手にとってそれは「無視できないくらいには起こりうる問題」となります。
おまけ: 反論を考えるときも「Why true?」と「Why important?」
「Why true?」と「Why important?」は、人がアイデアに対する疑問として持ちうる主な疑問であると説明しました。つまり、この二つの疑問を解消できないと、ジャッジは相手の話に納得できません。そのため相手の話について、「それが本当に起こるのか」と「それが重要なことなのか」を削ることができれば、効果的な反論になります。
例えば、先ほどの例で挙げた、「THW ban tobacco.」の肯定側への反論を、2つの観点で考えてみましょう。
- 肯定側の意見: タバコを禁止することで人々の健康を守ことができる。
- 反論「Why true?」:
:タバコを禁止されてもブラックマーケットで入手したり、お酒などの別のものに依存したりするから、結局健康を守れないですよね? - 反論「Why important?」
:幸せは人それぞれだから、政府が介入してまで健康を強いる必要はないですよね?
「Why true?」「Why important?」は立論の大切な要素であり、それは相手も同じです。これを切り口に相手の話に反論を投げかけると良いでしょう。
まとめ
今回の記事では、強い立論を立てる上でのコツをご紹介しました。
- 立論は「Why true?(メカニズム)」と「Why important?(インパクト)」で考える。
- メカニズムでは、「SQ」と「AP」を決め、その道順を示す。
- インパクトでは、「質」✖️「量」を最大化する。
うまく立論ができない時は、これらを意識してみるといいかもしれません。
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。
合わせて読みたい
ディベートを始めたばかりの時は、相手の立論に反論するもの大変です。強い反論をするコツは、こちらの記事で解説しています。
ディベートで強い反論をするコツ【相手の話を切る・削る】 – Debate図解ノート
ディベートで必須の「反論」、最初は難しいですよね。この記事ではまだ反論に慣れない方向けに、反論の基本的な切り口を図解しています。相手の論理に「それは違う」を突きつける”切る反論”。相手の話を「それは重要ではない」と小さくする”削る反論”。効果的な反論のヒントが得たい方はぜひこの記事をご覧ください。
ディベーターにオススメな本
『即興型ディベートの教科書』
ディベートでの立論の仕方を含め、初心者ディベーターにとって大事な知識が体系的に書かれている本です。私もこの本からたくさん勉強しました。気になる方はぜひ読んでみてください。リンクはこちら(amazon)から。