【論語と算盤】本の内容がわかる渋沢栄一の3つの名言【古典を読む】
「渋沢栄一がどんな考えを広めた人なのか興味がある。」
「よりよく仕事をするための名言を古典から学びたい。」
「『論語と算盤』の内容を簡単に知りたい。」
このような悩みを持つ方に、この記事では渋沢栄一の名著「論語と算盤」の3つのポイントを、名言とともにご紹介します。
この記事で書いていること
- 大事なのは「道徳」×「経済」
- 渋沢流・モノゴトの判断基準
- 著者の説く「人生の目的」
本質的な人生論や仕事論が書かれていて、私も2、3度読み返しています。
渋沢栄一の「論語と算盤」とは?
『論語と算盤』は、日本の道徳の教科書であった”論語”の考えをもとに、いまの商業的な社会をどう生きるかについて書かれた人生論です。たとえば、こんなテーマについて考えるきっかけをくれます。
- 仕事やお金との向きあい方
- 人や社会との関わり方
- 自分の人生の歩み方
1つ1つの章が短いのでとても読みやすいです。すべての社会人の方、これから社会に出る方に役に立つ内容だと思います。
渋沢栄一とはどんな人?
著者の渋沢栄一は「近代日本経済の父」とも呼ばれ、時代を超えていまも尊敬されています。
その理由の1つは、彼の業績にあります。はじめは明治政府の官僚として国づくりに取りくんだ後、民間人として並み外れた数の事業で社会を助けました。
- 500以上の企業の設立、運営に携わる
- 大学、医療・福祉団体の設立など600以上の社会事業に携わる
- 特に日本に銀行を広めたことは有名
「論語」で学んだ道徳
また彼は、私益のためでなく公益のために事業をおこなった道徳的な人として知られています。そして、そこに影響を与えたのが子供時代に学んだ「論語」でした。
「論語」は中国の思想家である孔子の言葉をまとめた書物で、江戸時代の日本でも教科書として読まれていました。渋沢栄一も論語についてこのように語ります。
私は、世の中で生きていくときに道を誤らぬようにするには、まず論語を熟読せよというのである。
論語と算盤のメッセージ
『論語と算盤』では、社会のために尽くした彼が「論語」をもとに考え出した人生論を知ることができます。
この記事では、そんな本書のメッセージを3つの名言とともに解説します。この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。
論語と算盤の名言①「道徳と経済の両立」
まず1つ目。本書のメインのメッセージがこちらです。
利を図るということと、仁義道徳の両方をバランスよく発展させることによって初めて国家は健全に発達し、個人も各々富んで行くというものである。
著者がこの本でもっとも伝えたっかたことは、論語と算盤、言いかえると「道徳」と「経済」は両立することができ、むしろ両立しなければいけない、ということでした。それはたとえば、次のようなことを意味します。
- 道理にかなった正しい方法でお金を稼ぐこと
- 「自分の利益」と「社会の利益」の両立を目指すこと
これが大事な理由は、道徳と経済の2つがあって初めて、社会は継続的に発展することができるからです。
・経済がない.. → 国家も個人も経済的に自立できなければ、そもそも生きていけない。すると、道徳も役に立たない空理空論になってしまう。
著者は自分の利益を追い求めることを肯定しています。しかし、正しいやり方で、他者のことも同時に考える、ということが前提のようです。
道徳と経済は矛盾しない..?
しかし、そうは言っても一般的に次のようなイメージを持っている人は多いかもしれません。
本の読者「お金を追いもとめる経済自体が、道徳的な生きかたと相反するイメージがある。お金持ちはガメつい印象があるし..」
そこで、経済の代名詞でもある「お金」について、著者の考えがわかる言葉をご紹介します。
金はそれ自身に善悪を判別する力はない。善人がこれを持てば、善くなる。悪人がこれを持てば、悪くなる。つまり、所有者の人格如何によって、善にもなり悪にもなる。(中略)貨幣は物の代表であるから、物と同じく貴ばなければならぬ。
つまり、お金自体はふつうの道具と同じくニュートラルなものであり、いいも悪いもそれを持つ人しだいということです。そして、経済が道徳的になるかどうかも、そこに関わる人しだいになります。
論語と算盤の名言②「道理にかなった考え方」
続いて2点目は、お金の「使い方」に対する著者の考えもわかる内容です。
いかに自ら苦心して築いた富にした所で、富を自分だけの専有だと思うのは大いなる間違いである。要するに、人はただ一人だけでは何事もなし得るものでない。国家社会の助けによって自らも利し、安全に生存するもできるので、もし国家社会の助けがなかったならば、何人たりとも満足にこの世に立つことは不可能であろう。これを思えば、富の度を増せば増すほど社会の助力を受けている訳だから、この恩恵に報いるために、救済事業をすることはむしろ当然の義務で、できる限り社会のために助力しなければならぬ筈と思う。
つまり、金を稼いだならその内のいくらかは公共のために使うのが道理だ、といっています。
なぜなら、どれだけ自分でお金を稼いだように見えても、この社会に生きて働いている時点で、私たちはいろいろな助けを得ているからです。また、その度合いはお金をたくさん稼いでいる程大きくなります。
お金をだれか人のために使うことも大事かもしれません..。
渋沢流・モノゴトの判断基準
またこの文章からも、著者は「社会から助けてもらっているからそのお返しするべき」という道理や、「他人のために何かしよう」という利他の気持ちを大事にしていることがわかります。
実際、著者はモノゴトを決めるときに、次のような判断基準をもっていたようです。
まさに人はそれぞれ顔が違うように、心も異なっているものであるから、(モノゴトの判断の仕方を)一様には言えないが、もし私ならどうするかと問われれば、次のごとく答える。すなわち、事柄に対し「①どうすれば道理にかなうか」をまず考え、そしてその「②道理にかなったやり方をすれば国家社会の利益となるか」を考え、さらに「③それを実行すれば自己のためにもなるか」を考える。そう考えてみた時、もしそれが自己のためにはならぬが、道理にもかない、国家社会をも利益するということなら、私は断然自己を捨てて、道理のある所に従うつもりである。
すなわち、①モノゴトの道理→②社会の利益→③自分の利益の順に考えて、①と②が当てはまれば、③の自分の利益を満たしていなくても実行したと言います。
自分を後回しにすることはむずかしい道かもしれませんが、このような考え方も見習いたいです..。
論語と算盤の名言③「人生の目的」
最後に3つ目。著者が「人生の目的」について書いた部分があったので、こちらをご紹介します。
人はこの世に生まれた以上、必ずなんらかの目的があるはずだが、その目的とは果たして何であるか。いかにして遂げるべきか。それは自分の得意とする能力、技量、それを十分に発揮して、組織や親に忠孝を致し、あるいは社会を救済しようと心がけること。そのためにおのれの修得した学問なり、技術をその能力にすべてを傾けて尽くすのである。
すなわち、人生の目的を「自分の持てる力を効果的に発揮して、周りの人や社会を助けること」と言っています。これこそ、道徳と経済を両立させた著者の人生論になります。
自分の力を発揮するために
また、自分の力を発揮して社会をよくするための、個人で実践できる著者からのアドバイスをご紹介します。誰しも関係する「仕事」への向き合い方がわかる内容です。
いかなる仕事に対しても、趣味を持たねばならない。
趣味という字は理想とも聞こえるし、欲望とも聞こえるし、あるいは好み楽しむというような意味にも聞こえる。例えば、仕事を表面通りに勤めるだけでは、「決まり事」をしているだけで、ただ命令にしたがっているだけである。しかし趣味をもって取り組んだならば、自ら工夫して、この仕事はこうしてみたい、これをやったらどうなるというように、いろいろ理想欲望が生まれてくる。
つまり、仕事の中に自分なりの考えや嗜好をもち、工夫をしながら取りくむことが大切みたいです。そうすることで、自分なりのやり方で社会の役に立てるだけでなく、自分自身が楽しく仕事に取り組めるからです。
もし大いなる趣味と喜びをもって仕事に取り組むならば、たとえいかに忙しく、また、いかほど煩わしくとも、倦怠や厭忌というような苦痛を感じることはない。
少し抽象的ではありますが、実践してみると自分にとっても社会にとってもプラスになるかもしれません。
まとめ
この記事では、渋沢栄一の「論語と算盤」の3つのポイントを、名言とともにご紹介しました。
この記事で書いていること
- 大事なのは「道徳」×「経済」
- 渋沢流・モノゴトの判断基準
- 著者の説く「人生の目的」
ここに書いたことは本書ほんの一部です。興味のある方は、ぜひ本書を手にとってみてください!
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。