【森の生活】ミニマリストの古典から学べる3つのこと【古典を読む】
「ソローの名著『森の生活』について要点を学びたい。」
「本書を読む前に、この本から何を学べるのかを知りたい。」
「ミニマリストな生活の、考え方・やり方を参考にしたい。」
このような悩みを持つ方に、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの古典的エッセイ「森の生活」から学んだ3つのことをご紹介します。
この記事で書いていること
- 簡素に生きること
- 遠回りをせず自由に生きること
- 自然と友達になること
1850年代に発行されましたが、本質的なことが書いてあり、今も読み継がれている本です。ちなみに、上・下巻あります。
ソローの「森の生活」とは

本書は、アメリカの作家であるソローが、森の中でおよそ2年間の自給自足の暮らしをした記録をまとめたエッセイになります。
簡素な生活の様子、人や自然との交際、生き方の探求など、彼がその生活で経験したことや考えたことを知ることができます。
ミニマリストの先駆け
また、ソローがここで書いていることは、よく耳にする「ミニマリスト」の先駆けともいえます。つまり、自分に必要な最低限のもので暮らそうとする考えです。
しかし、そのような生活は、不要なものを買うために、不要な労働で人生をムダにしていると思った彼は、本質的な人生をあゆみ、そこで学んだことを世に訴えるため、この実験的な生活をはじめました。
私が森へ行ったのは、思慮深く生き、人生の本質的な事実のみに直面し、人生が教えてくれるものを自分が学び取れるかどうか確かめてみたかったからであり、死ぬときになって、自分が生きてはいなかったことを発見するようなはめにおちいりたくなかったからだ。
「森の生活 上: ウォールデン」, H.D. ソロー著, 飯田実訳
人生の本質との向き合い
森の生活のなかで人生と向き合った彼のアイデアは、今もたくさんの人に読み継がれています。特に、シンプルな生活をしてみたい方に参考になる内容も多いと思います。
ここでは、私が本書から学んだことを3つのことをご紹介していきます。
- 簡素に生きること
- 遠回りをせず自由に生きること
- 自然と友達になること
みなさんが本書に興味をもち、手にとる際の参考になれば幸いです。
森の生活①「簡素に生きる」
まず1つ目に、ソローが本書の中でもっとも繰り返しているポイントです。

それは、簡素に生きることの大切さです。つまり、持ちものや食べるものなど量を、できる限り少なくしておいた方がいいと彼は主張します。なぜなら、生活に必要なものを増やすことは、すべての苦しい生活のはじまりだからです。
多くのものと暮らす悪循環
というのも、生活に多くのものを必要とすると、人はしばしば次のような悪循環におちいります。
↓
それを得るために必死で働くほかない。
↓
体力の消耗を補うためにさらに食べ、気晴らしのためにさらに買う必要がでる。
↓
さらに長く、必死な労働をするほかない..。
反対に、少ないもので生活する人は、あまり働かず、また少ない出費で生きていくことができます。そうなると、自分を養うことはもはやスポーツのように楽しいものになる、と彼はいいます。
要するに、われわれが簡素に、また賢明に暮らす気になれば、この土地で自分の身を養っていくことは苦痛であるどころか気晴らしにすぎないことを、私は信念と経験に照らして確信している。
「森の生活 上: ウォールデン」, H.D. ソロー著, 飯田実訳
ソローの簡素な生活
実際、ソローの簡素な生活の様子から、私たちはとても少ないもので豊かに生きられることを学べます。たとえば、彼は簡素な衣食住のほかに、私たちに必要なものはこれくらいだと述べています。
私の経験で言うと、現在この国では、そうした生活必需品についで、二、三の道具、ナイフ、斧(おの)、鋤(すき)、手押し車などが必要であり、勉強好きのひとには、ランプの明かり、文房具、少数の蔵書も加わるが、こうしたものはどれもわずかな費用で手にはいるものばかりである。
「森の生活 上: ウォールデン」, H.D. ソロー著, 飯田実訳
そして、簡素な生活は、多くのものを持つ生活よりも、よろこび満ちています。自分に必要なものを減らす工夫が、大切かもしれません。
森の生活②「自由に生きる」
続いて本書から学んだ2つ目のことは、やりたいことを後回しにせず、自由に生きることです。

森で暮らすという大胆な実験をしたソローですが、他の多くの人はやりたい生活があってもそれを後回しにしていると主張しています。
人々がこうする理由はたいてい、周りの人に成功していると思われたいからです。まずは人から認められるような成功が得られる、形式的な生活を選んでしまいます。
その結果、自分のやりたいことをするのは、価値の低い老年になってからです。本書のこの文章からも、彼の主張がよくわかります。
こうして人生の価値が最低となる老年期に、あやふやな自由を楽しもうと、人生の最良の時期を金儲けに費やすひとびとを見ていると、まずインドへ出かけていってひと財産つくり、それからイギリスに戻って詩人の生活を送ろうとした、あるイギリス人のことを思い出す。この男はすぐさま屋根裏部屋へあがって詩人の生活をはじめるべきだったのだ。
「森の生活 上: ウォールデン」, H.D. ソロー著, 飯田実訳
私がこれを印象的だと思ったのは、自分もするかもしれない失敗であり、そして後悔したときには取り戻せないという怖さがあるからです。
どうすればこれを回避できるのか、それに関するソローのアイデアもご紹介します。
すぐに始めることが大事
その彼のアイデアがよく表れているのが、徒歩の旅行者がもっとも速いという内容です。
あるひとが私に言う。「君は貯金もしていないのかい。旅行が好きなんだろう。今日にも列車に乗ってフィッチバーグへ出かけ、あの辺を見物してきたらいいのに。」だが私はもっと賢いのだ。いちばん速いのは徒歩の旅行者だということを、ちゃんと知っているのだから。
「森の生活 上: ウォールデン」, H.D. ソロー著, 飯田実訳
しかし、徒歩の旅行者は、すぐにでも旅に出かけることができます。電車を使う人が働く間にすすむ彼らは、けっきょくより遠くまで行き、そしてもちろん、ずっと多く楽しみます。
小さくても、今はじめる
この考えは、他のモノごとにも応用できると思います。
- いつか旅に出たいなら、まずは徒歩で出かける。
- 小説や絵をかいて生活したいなら、すぐにかいて誰かに見せてみる。
- 踊りたいなら、その場で踊ってみる。
今の小さな一歩は、数年後の大きな一歩より、ずっと遠くに進むことができます。徒歩の旅行者として、今日出発しましょう。
とはいえ、みんなと違う道を行けば不安もあると思います。そのような時には、次の3つ目のポイントも役にたつかもしれません。
森の生活③「自然と交際する」
最後に、私が本書から学んだ3つ目のことです。それは、自然と交際することの大切さです。

ソローは本書の中で、彼が森の中で出会うゆたかな自然についても書いており、私たちもその情景を楽しむことができます。
そして、私たちのいい交際相手となってくれるのは自然であり、彼らとの交流により心の平穏をたもつことができる、ともいいます。なぜなら、自然は寛容だからです。
ところが、私自身の折りにふれての経験によると、たとえ気の毒な人間嫌いや、ひどい憂鬱症にかかった者でも、このうえなく親切でやさしい、けがれのない、心の励みになる交際相手は、自然界の事物のなかに発見できるものである。
「森の生活 上: ウォールデン」, H.D. ソロー著, 飯田実訳
心の慰めになってくれる自然
信念に従い森の生活を始めた著者でも、ときには「こんなふうに暮らしていていいのだろうか」と不安になる場面も本書には描かれていました。しかし、そんなときに彼をなぐさめてくれたのが、森であり、自然であったことがわかります。
こんな生活は、わが町の同胞諸君にとっては、疑いもなく怠惰のきわみであった。けれども、もし鳥や花たちが彼らの基準で判断してくれたなら、私は失格とはならなかっただろう。(中略)自然の一日はとてもおだやかにすぎてゆくものだから、人間の怠惰をとがめ立てたりはしないであろう。
「森の生活 上: ウォールデン」, H.D. ソロー著, 飯田実訳
比較や判断の多いこの時代に
人との比較が容易になった今、「自分はまだまだではないか?」と思い、不安になることも多いかもしれません。特に、なにかに一生懸命な人や、みんなとは違う道を歩んでいる人ほど、視野が狭くなったり、落ち込んだりしてしまうと思います。
そういうとき、自分の厳しい判断を和らげてくれるものが、自然との交流だと思います。広大で、多種多様で、人間の限界をはるかに超える姿は、私たちの視野を広げてくれるからです。
- 公園を散歩する
- 週末に、森や自然の中にいく
- 空を見上げる
元気がほしいとき、このような行為がいかに効果的か、本書が気づかせてくれると思います。
まとめ
この記事では、ヘンリー・デイヴィッド・ソローの古典「森の生活」から学んだ3つのことをご紹介しました。
- 簡素に生きること
- 遠回りをせず自由に生きること
- 自然と友達になること
周りにあるモノや情報の量がさらに増えていく中、彼のライフスタイルや生き方についてのアイデアは、大切な気づきをくれるはずです。興味のある方は、ぜひ本書を手にとって見てください。
この記事が皆さんのお役に立てれば幸いです。